スクレ・ラデュレの秘密
18世紀フランスのフェミニンな空気をたたえるサロン・ド・テ、ロマンティックなパティスリー、美しいパッケージやコレクション……。ラデュレは、老舗パティスリーの域を超え、訪れる人をトリップさせてくれる夢の世界。そんなラデュレのイメージの仕掛け人として、コミュニケーション&マーケティング部門を率いるサフィア・トマス・ベンダリさんにお話を伺いました。
──10年ほど前からラデュレのイメージづくりを担うサフィアさんですが、どんな経緯でラデュレでお仕事することになったのですか?
ラデュレに入ったのは偶然なのよ。広報にいた友人の紹介で、現オーナーのダヴィッド・オルデーに出会い、その情熱と時代を見る目に魅かれて働くことになったの。何しろそれまでの私は、モード雑誌の編集やソニア・リキエルのプレスなどをしていた筋金入りの左岸派モードピープル。“サロン・ド・テよりもシャンパンとパーティ”、という暮らしだったの(笑)。
──ラデュレで働きはじめて、最初に手掛けられたお仕事は何だったのでしょう?
パッケージを充実させることでした。ラデュレは93年に現在のオーナー親子の手で生まれ変わり、私が入ったのはシャンゼリゼ店オープンから3年ほど経ったころ。当時すでにパッケージやロゴの色づかいが美しかったから、すぐに「これを充実させてコミュニケーションに利用したい」と思ったの。女性にとって、たとえば指輪を買うときは、その箱も大事な要素。ラデュレのフェミニンなパティスリーにも、宝石の箱と同じように美しいパッケージを与えたい、と思ったの。
──次々に繰り出されるマカロンの新作ボックスは私たちも楽しみにしていますが、年間いくつくらい発表していらっしゃるのでしょう?
ファッションやデザイン界のクリエーターとのコラボレーションも含め、期間限定の新作パッケージは年に12個以上になるわ。一番気に入っているのは、“コフレ・ポンパドゥール”など、“コフレ・ビジュー(宝石箱)”のシリーズね。マカロン以外のパッケージで言えば、我が家のネコがモデルになったラング・ド・シャの箱にも格別の思い入れがあります。
──ラデュレの真髄であるパティスリーのデザインにもかかわることがあるのでしょうか?
もちろん、シェフ・パティシエとのコラボレーションも密接よ。たとえば黒いマカロン(レグリス)や、ピンク色のローズ味のルリジユーズは、私が出したアイディアが形になったものです。
──1862年創業のラデュレは、本店に当時の内装を残す老舗ですが、今のパッケージやお店づくりのイメージソースは、メゾンの歴史資料などにあるのでしょうか?
実はラデュレには創業当時の資料がほとんど残っていないの。だから18世紀フランスのロココ風、19世紀のナポレオン3世の帝政風をベースに、フェミニンなイメージを演出しています。これは自分でも大好きな時代。インスピレーションの源は、パリにあるアール・デコ美術館(インテリア装飾、モード・テキスタイル、広告の3つの分野の美術館)やガリエラ・モード美術館(モードの歴史など服飾専門の美術館)はもちろんですが、当時の生地やアンティークショップ、のみの市などいろいろです。
──キャンドル、傘、ポーチ、ステーショナリーなど、“ラデュレのエスプリ”、“パリのエスプリ”を表現したギフトコレクション、「スクレ・ラデュレ」もサフィアさんのクリエーションですね。これらのコレクションは、どんな発想から生まれたのでしょうか?
私にとって、香りのないインテリアはありえない。だから「ラデュレの香りをキャンドルにしよう」というのがはじまりでした。最初のコレクションは、おいしそうな香りのするキャンドル。「スクレ・ラデュレ」のコンセプトは、「あなたのお家にもラデュレの小さなかけらを持って帰ってほしい」という願いなんです。
──「スクレ・ラデュレ by マークス」のコレクションの中で、ご自分で愛用していらっしゃるお気に入りの品は?
ラデュレのウィンドー前にちょこんと座る様子がかわいらしいネコのウィンドーキーリング。よく使うのはノートやレターセット。友人の子どもたちにメッセージを送るときはステッカーを愛用しているし、アルバムも、ベイルートの新店オープン時に持参して、旅日記のスクラップブックづくりに活用したのよ。
パリ左岸を愛するライフスタイルやセンスのよさで知られるサフィアさんは、ラデュレのイメージを体現する憧れのフランス女性として、日本の女性誌に登場することもしばしば。次回のインタビューでは、サフィアさんの好きなものや暮らしの様子をお伺いします。